「判例でみる音楽著作権訴訟の論点60講」
(田中豊編。日本評論社発行)
IT企業法務研究所代表研究員 棚野正士
社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)は昨・2009年創立70周年を記念して、「JASRAC70年史―音楽文化の発展を願って」((JASRAC発行)と「JASRAC概論―音楽著作権の法と管理」(紋谷暢男編。日本評論社発行)を世に出したが、今年・2010年3月、第3弾として「判例でみる音楽著作権訴訟の論点60講」(田中豊編。日本評論社発行)を出版した。
本書は類書にない画期的な方針で編集されている。それは題名の通り音楽著作権訴訟の論点60を取り出してそれぞれに多角的な考察がされている。
一つ一つの論点(例えば、第1章「著作物および著作者」を見ると、論点として「編曲の著作物」「採譜の著作物」「バレエ振付けの著作権」「未承認国家の著作物」「著作者の認定」「ライブコンサート映画の著作者」が取り上げられ、それぞれの論点について、“著作権訴訟上の論点”“事案の概要”“争点”“判旨”“考察”に整理して執筆されている。
全体で7章、論点60が論じられており、読み物としても面白く、研究書としても第一級の文献で、JASRACの意気込みと音楽著作権に賭ける情熱が感じられる。
編者・田中豊弁護士は、“はしがき”で「本書は、音楽著作権をめぐる判決・決定例を素材とし、実際の訴訟において頻繁に時に激しく争われる60の論点を抽出し、それらを訴訟という動態の中に位置づけて検討しようとするものである。したがって、著作権法の個別の規定の解釈・適用を論じるのはもとより、広く民法・商法・会社法・刑法・民事訴訟法・刑事訴訟法上の問題を考察し、著作権管理の実務に言及する。」「そして、各事件につき、まず著作権訴訟上の論点を整理し、事案の概要・争点・判旨を紹介したうえで、各論点につき、その法的性格を明らかにし、その基本的理解を確認しつつ、当該事案における重要度に応じて先端的問題点の考察に至るという執筆方針を採った。」と述べている。
執筆者は下記の弁護士である。
- 田中豊弁護士
- 鈴木道夫弁護士
- 小川まゆみ弁護士
- 藤原浩弁護士
- 市村直也弁護士・弁理士
- 前田哲男弁護士
- 中川達也弁護士
- 矢吹公敏弁護士
以上