日本が世界に誇るオペラ作曲家・三木稔さんから年賀メール
2011年正月
IT企業法務研究所代表研究員 棚野正士
日本政府は2002年に知的財産戦略大綱を決定し、“知的財産立国の実現”を国家戦略にしている。そして、2004年から毎年「知的財産推進計画」を発表している。
「知的財産推進計画2010」を見ると、「技術力と並んで我が国が強みを持つ文化力(表現力)は『クールジャパン』として評価されているが、産業面でその潜在力を発揮しておらず、ソフトパワーを生かし切れていない。デジタル化・ネットワーク化の進展に伴うデジタルコンテンツの重要性の高まりも踏まえ、成長戦略として国際展開を推進するとともに、他産業とも連携して波及効果を発揮していく。」との基本認識を述べ、「コンテンツ強化を核とした成長戦略の推進」を「戦略 2」に挙げている。
国の知的財産戦略では、“文化力” “ソフトパワー” “コンテンツ”という言葉がキィワードになっているが、ここで忘れていけないのは、“芸術力” “芸術の生のコンテンツ”である。
“コンテンツ”は“生のコンテンツ”こそ重要である。
100年後までソフトパワーを持ち、日本の文化力を歴史に示す世界的オペラ作曲家・三木稔を日本政府は忘れてはいけない。三木稔は200年後も世界に輝き続ける日本の財産である。
日本政府が「知的財産立国」を国家戦略にするなら、日本政府は三木稔を忘れないでほしい。その思いを込めて、三木稔さんから届いた年賀メールをご本人の了解を得てIT企業法務研究所ホームページに掲載する。なお、三木稔ホームページhttp://www.m-miki.comを開いて、日本よりもヨーロッパ、アメリカ、アジアで圧倒的評価を受けている大作曲家の仕事を知って頂きたい。100年後、200年後も世界に光を与える奇跡的な芸術家を知って頂きたい。
三木稔さんから届いた年賀メール
賀正
2011年1月元旦
世界中に 今年こそ明るく夢多い日常が訪れることを心から祈っています
昨年80歳を迎えた私はオペラ《幸せのパゴダ》を6月末に書き上げ《春琴抄》以来 他の作品と並行しながら創り続けてきたライフワーク『三木稔 日本史オペラ9連作』を37年を要して 遂に完成させることができました
これも皆様方の暖かい声援に押されてできたもので心から感謝しております
ただ 各オペラ団体や劇場はこの世界的な不況下 悲痛な予算削減に直面しておりフルスコアまですべて完成した大作《幸せのパゴダ》の初演予定はまったく五里霧中の状態です
しかしこのような事態は 大オペラを書く作曲家の宿命だと観念しつつ着手した私です
連作としての目的意識の上でも またQualityでも Quantityでもこれからオペラを書く世界中の作曲家の目標となり
100年先には 各オペラが最高の受容をされるとの確信で心を暖めています
《幸せのパゴダ》が背負ったきつい状況とは別に とても嬉しいことがありました
第8作《愛怨》は ハイデルベルク劇場から真摯に乞われて彼らのシーズンの正規の演目として 昨年2月から6月までに8回行われた
日本語歌唱(ドイツ語字幕)のドイツ初演が各メディアからの絶賛と 毎回ほぼ完売という記録を残しました
これで私の5つのオペラが 欧米の劇場自体が企画したシーズンで計40回上演されたことになります
《愛怨》のような大作のみならず 量的に20作ほどになる私のオペラ・音楽劇作品はそれぞれ新しい上演手段によって 人々の幸せに奉仕できており
たとえば 国内で1000回は上演されている歌楽(モノオペラ)《ベロ出しチョンマ》が12月下旬 ソウルでパンソリの歌手と伽耶琴の演奏+影絵という民族的かつ土俗的表現方法で注目を浴びました
ほとんど病床で書き上げた1時間のオペラ《きみを呼ぶ声》はエコ・オペラという作曲意図が受けてカワイ出版から早速出版され3月には オケピットのあるホールがない故郷徳島でも地元勢で上演されます
2008年末から昨2010年3月16日の誕生日前日までの1年半に頭と腹の5回の手術をしましたが それらは快癒しました
しかし 10年前に発覚した前立腺がんはホルモン治療も女性ホルモン剤+抗がん剤も効かなくなりました
後は副腎皮質ホルモン剤 ステロイド系の薬が効果するかどうかです
『日本史オペラ9連作』の完成で 大オペラへの思いは封印し残るわずかの人生ながら 大切な日々に書くべきものを書きつつもう一つのライフワークである「日本を含むアジア民族楽器の交流と現代化・国際化運動」に捧げるため 頑張ります
国や民族や宗教を問わず、その「共生・共楽」のために尽くすわれわれに 皆さんの更なる応援を 是非お願いいたします