近江商人の“三方よし”
―“私的録画補償金”関連ショート・エッセイー
棚野正士
1月12日、社団法人日本音楽事業者協会(音事協)の「2012新年の集い」に招かれた。昨2011年は「文化の力」という明確なコンセプトの下に新年会が開かれ、尾木徹会長が「文化力」をテーマとした名スピーチをして、会場満員の出席者に感動を与えた。
今年も「共存共生」という”日本復興”にぴったりのコンセプトで新年会が開催され、尾木会長が「共存共生」から「共存共栄」へというスピーチをして、1500人の出席者に再び深い感銘を与えた。
尾木徹音事協会長は近江商人の経営哲学「陰徳善事」に触れて、「三方よし」という考え方を紹介した。「三方よし」とは、「売り手よし、買い手よし、世間よし」という近江商人の経営理念である。このスピーチを聞きながら、わたくしは、このことは「私的録画補償金制度」にも当てはまると感じた。
かつてJASRAC理事長芥川也寸志さんは審議会に出した意見書で、「創り手、送り手、受け手という循環のなかにこそ音楽の営みが存在する」という趣旨の意見書を書いて、私的録音録画補償金を巡って、メーカーと権利者が対立していた著作権審議会の空気を変えた。
「三方よし」は商売だけでなく、権利が対立する法律問題にも当てはまる。今年は「三方よし」の考え方で、法律問題、特に「私的録画補償金」の問題に取り組みたい。「権利者よし、メーカーよし、世間よし」である。
以上