IT企業法務研究所 創作者の地位に関する研究網

著作権法学会シンポジウム「著作権法の将来像と政策形成」 ―著作権法学会2012年度研究大会―

IT企業法務研究所代表研究員 棚野正士

 2012年4月21日(土)10時から17時まで、東京・一橋記念講堂で著作権法学会(会長 野村豊弘先生)「学会創立50周年記念・2012年度研究大会」が240人の参加を得て開催された。
 初めに、岡山大学名誉教授・元著作権審議会会長阿部浩二先生が学会設立50周年記念講演を行った。
 阿部先生は、昭和37年3月に48人の会員で発足し4月に第1回総会を開いた著作権法学会を回顧し、発足に関わった大学者たちのことに触れて、「50年の歴史は人間が飾っている」と述べた。その中で、中川善之助、勝本正晃、城戸芳彦、水野錬太郎、戒能通孝、野村義男、伊藤正巳、伊藤信男、池原季男、江川英文ほか伝説的学者の思い出が語られた。カリフォルニア大学ミューラー教授が述べたと言う「権利は自らがかち取れ」という言葉は印象に残る。

(注)「コピライト No.13」(著作権資料協会1962.4.1発行)には「著作権法学会発足」の見出しで、次の記事が出ている。
「さる3月1日、東季彦氏を会長として著作権法学会が発足した。これは著作権法の学問的研究を目的とし、著作権に関する研究会、講演会などの開催、機関誌の刊行などを予定している。第1回の総会は4月14日に行われる予定である。また、事務所は日本大学法学部内(千代田区神田三崎町)に置かれ、現在、同学同好の士に呼びかけている。なお、同学会の役員は次の通りである。
【会長】
東季彦(法学博士)
【顧問】
赤木朝治(恩賜財団済生会会長)、永田菊四郎(法学博士)、山田三良(法学博士)
【理事】
東季彦、江川英文(立大教授)、戒能通孝(法学博士)、勝本正晃(法学博士)、城戸芳彦(法学博士)、高梨公之(法学博士)、高野雄一(東大教授)、中川善之助(学習院大学教授)
【幹事】伊藤信男(早大講師)の諸氏。

シンポジウム(司会:椙山敬士弁護士)は次のプログラムで行われた。

  • 米国における著作権リフォームーCopyright Principles Projectを中心にー
    (石新智規弁護士)
  • ヨーロッパにおける著作権リフォームー欧州著作権コードを中心にしてー
    (上野達弘立教大学教授)
  • 著作権法の立法過程分析:政治学の視点から(京 俊介中京大学講師)
  • 著作権法形成における判例と学説の協働(大須賀滋東京地方裁判所部総括判事)
  • 著作権制度における日米のNGOの役割(野口祐子弁護士・クリエイテイブ・コモンズ・ジャパン常務理事)
  • 著作権法の政策形成と将来像(田村善之北海道大学教授)

なお、シンポジウム閉会にあたり、椙山座長から意見を求められた半田正夫先生は「著作権法は文化法であり、誰が読んでもわかる法律でなければならない。著作権法の全面改正が必要である。」と語り、同じく斉藤博先生は「契約の問題、職務著作の問題、あるいは人格権の不行使特約、スリーステップテストの課題など問題点はいくつかある。また、表記の簡素化も必要である。今はカッコ書きが多すぎる。日本語は本来不自由ではないはずである。」と問題点を指摘した。

以上

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