EU司法裁が「忘れられる権利」認める判決、グーグルに対する個人情報削除要請を支持
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EU司法裁判所は13日、米検索大手グーグルに対し、検索結果として表示された自身に関する過去の報道の削除を求めた原告の訴えを認める判決を下した。EUではネット上における個人情報保護の強化を目的として、オンラインサービスの利用者が事業者に自分に関するデータの削除を要求できる「忘れられる権利」を認める規則の導入が検討されている。司法裁はこれを先取りして利用者の権利を認めたかたちで、市民の知る権利や表現の自由とプライバシー保護のバランスについて判断を示した画期的な判決といえる。
今回の事案は、原告のスペイン人男性がグーグルで自分の名前を検索したところ、差し押さえられた自宅が競売にかけられたことを報じる1998年の新聞記事のリンクが表示されたのが発端。男性はプライバシーの侵害にあたるとして、2010年にスペインのデータ保護当局(AEPD)に対し、グーグルに情報の削除を命じるよう申し立てた。AEPDは男性の主張を認めてグーグルに削除命令を出したが、グーグルはこれを不服として提訴。スペインの裁判所がEU司法裁に判断を求めていた。
司法裁は昨年6月、検索エンジンにネット上で公開された個人情報を検索結果から削除する義務はないとする法務官見解を公表したが、最終的にこれを覆す判断を示したことになる。司法裁は判決文で、検索エンジンのプロバイダーにはプライバシー保護の責任があり、一定の条件下で検索結果から個人情報を含むウェブページへのリンクを削除する義務があると指摘。原告の男性の場合、新聞記事の内容自体は真実であるものの、すでに問題は解決している点に触れ、グーグルに対して「検索の目的や経過時間を考慮して、妥当性がなく、現況と関係がない、過剰なデータ」の削除を要求することができると結論づけた。ただし、情報の性格によって「ユーザーの知る権利とプライバシー保護のバランスを取る必要がある」とつけ加えた。
グーグルは司法裁が昨年の法務官見解を覆す判断を示したことに失望感を表している。同社の報道官は「法務官の見解と大きく異なる判決が出たことに驚いている。判決の内容を精査するための時間が必要だ」とコメントした。
(Reuters, 2014/5/13 他)
(庵研究員)
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