Aereoの番組ストリーミング配信は「著作権侵害」、米最高裁判決受けサービス停止

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 地上波テレビのストリーミングサービスを展開する米Aereoと米主要テレビネットワークの間で続いていた著作権侵害訴訟で、米連邦最高裁判所は6月25日、ネットワーク側の主張を認める判決を下した。一審と控訴審はいずれもテレビネットワークによる業務差止めの仮処分申請を却下していたが、最高裁はAereoのサービスが放送事業者に対する著作権侵害にあたると判断した。Aereoは判決を受け、6月28日付でサービスを停止した。今後の方針を検討するため一時的にサービスを停止し、すべての加入者に対して最終月の利用料金を払い戻すと説明している。

 Aereoのサービスは加入者ごとに超小型アンテナを用意し、個々のアンテナがユーザーのリクエストに合わせてABC、CBS、NBC、FOXなど約30チャンネルの番組を受信して、パソコン、スマートフォン、タブレット端末などウェブ対応のデバイスにストリーミング配信する仕組み。2012年3月にニューヨークでサービスを開始し、その後ボストン、アトランタ、マイアミ、ヒューストン、ダラス、デトロイトなど米国の11都市にエリアを拡大した。料金は最大20時間分のオンラインストレージ付きで月額8ドルからとなっており、従来型のペイテレビに代わるクラウド型の番組配信サービスとして有望視されていた。

 ただ、ケーブルテレビや衛星放送などの多チャンネル事業者はテレビネットワークに高額な再送信料を払って地上波テレビ番組を再送信しているのに対し、Aereoは対価を払わず無許可で番組を配信している。このためABC、NBC、CBS、21世紀フォックスはテスト運用の段階で相次いでAereoを著作権侵害で提訴した。しかし、一審と控訴審判決は、Aereoのストリーミングサービスは加入者のリクエストに合わせて個々のアンテナが地上波の番組を受信し、それをブロードバンドでストリーミング送信するもので、公衆への番組再送信にはあたらないとするAereo側の主張を認め、同社に対する業務差止めの仮処分申請を却下していた。

 Aereoは自社のサービスについて、誰でも無料で視聴できる地上波放送の番組を受信するための手段を提供しているだけで、侵害著作権侵害にはあたらないとの主張を繰り返してきたが、最高裁では9人の判事のうち6人が原告側の主張を認め、テレビネットワークに対する著作権侵害と認定した。スティーブン・ブライヤーズ判事は判決文で、Aereoはテレビネットワークに巨額の番組送信料を支払っているケーブルテレビ局と「著しく類似」しており、「番組を受信するための機器を提供している単なるサプライヤーではない」と指摘。「放送事業者の著作物を不当に利用して」事業展開していると判断したと説明している。

 Aereoのチェット・カノジア最高経営責任者(CEO)は顧客に宛てた通知書で「裁判所の意見を聞き、今後の方向性を検討する間、一時的にサービスを停止する」と説明。そのうえで「テレビネットワークが放送に使用している周波数は米国民のものであり、アンテナが自宅の屋根やテレビ受像機の上に設置されていようと、クラウド上にあろうと、誰でもライブで番組を受信する権利があると確信している」と強調し、改めてサービスの正当性を主張した。

 Aereoがサービスを継続するには地上波テレビ放送の同時再送信を断念するか、テレビネットワークに莫大な番組再送信料を支払う必要がある。いずれにせよ、これまでのビジネスモデルを維持することは実質的に不可能で、既存の放送事業者にとって大きな脅威になりかけていたクラウドベースの番組配信サービスは厳しい逆風に直面している。関係者によると、Aereoは事業継続の道を模索しているもようだが、主要テレビネットワークはタブレット端末やスマートフォン向け番組ストリーミング事業の本格運用を目指しており、アナリストの間では、Aereoがネットワーク側にクラウド型ストリーミングサービスに関連した技術を譲渡するとの見方も出ている。

(Wall Street Journal, June 25 / June 29, 2014 他)

(庵研究員)

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