楽曲のラジオ放送は「無料広告」、NABが「実演権法」阻止に向け報告書

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 ラジオで楽曲を流す際に放送局は作詞家や作曲家と同様、演奏家に対しても著作権使用料を支払うべきかどうか、米国で激しい議論が展開されている。昨年末までに放送局に演奏家とレコード会社への補償を義務付ける「実演権に関する法律(案)」と、補償の対象から除外すべきだとする対案が提出され、対立する2つの法案について議会で審議が行われている。
 こうしたなか、全米放送事業者協会(NAB)はラジオ放送とCDやコンサートチケットの売り上げには明確な相関関係があるとの報告書をまとめ、このほど議会に提出した。
NABはラジオ局が楽曲を流す行為は「無償のプロモーション」にあたると主張しており、実演権法の成立阻止に向けて今後さらに議会への働きかけを強めるものとみられる。
 現行法では衛星・ケーブル・インターネット経由で楽曲が送信されるケースでは演奏家とレコード会社にも著作権使用料が支払われるが、AMまたはFMラジオで放送される場合は作詞家と作曲家のみが録音物に対する著作権保護の対象となる。昨年7月には多数のミュージシャンがレコード会社や業界団体と共同で、ラジオ局に著作権使用料の支払いを求める大規模なキャンペーンを展開。全米レコード協会(RIAA)などの強い働きかけで実演権法案が策定された。
 NABがまとめた報告書は、ニールセン・メディア・リサーチとポールスターの調査データを基に、ブルース・スプリングスティーンやU2などの著名ミュージシャンから無名の新人まで、キャリアやジャンルの異なる17組のアーティストを対象に、楽曲がAMまたはFMラジオで放送された回数と、CDやコンサートチケットの売り上げの関係性を分析したもの。
報告書は両者の間には「直接的な相関関係がある」と指摘。「ラジオ放送は無償のプロモーションであり、ローカルラジオによる楽曲紹介がCDやコンサートチケットの売り上げを押し上げ、アーティストの成功に大きく貢献している」と結論づけている。

(Mediaweek, June 6, 2008)

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