EU通信規制改革案、ネット遮断の条項めぐり加盟国が修正案否決

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EU通信規制改革案、ネット遮断の条項めぐり加盟国が修正案否決

 EU加盟国は6月11日に開いた通信相会議で通信規制改革案について協議し、欧州議会が5月の本会議で可決した修正案を否決した。欧州議会とEU加盟国は4月末に調停委員会を開き、通信市場の規制・監督制度を域内で一本化することなどを柱とする法案の内容で合意したが、欧州議会は最終段階で、音楽や映像などの違法ダウンロードの常習者に対してインターネットへのアクセスを遮断する場合、事前に裁判所の許可が必要との条項を付け加えた修正案を可決。通信相会議では事前の合意を覆して違法ダウンロード対策に関する規定を盛り込んだ欧州議会の案を受け入れることはできないとの認識で各国が一致し、9月以降に改めて調停委員会を開いて欧州議会との意見調整を図る方針を確認した。

 通信規制改革案は域内の多くの国で依然として旧国営通信会社が実質的な市場独占を形成している現状を改善するため、欧州委員会が2007年に打ち出したもので、各国の通信当局を統括する「欧州通信監督機関(BETR)」の創設や、各国当局に対し、国内で独占的な地位にある通信会社に回線部門を別会社として分離するよう命じる権限を与えることなどが盛り込まれている。

 問題となっているのはネット上での著作権侵害対策に関する規定の取り扱い。欧州委の原案にはインターネット接続業者(ISP)にサービス加入者による著作権侵害行為の監視を義務付けるルールが盛り込まれていたが、欧州議会は昨年9月の本会議でプライバシー保護の観点からこれを拒否した。一方、加盟国の間では違法ダウンロードの常習者に対して接続遮断を含めた厳罰で対処しようとするフランスと、慎重姿勢のドイツなどの温度差が大きいため、著作権保護対策については各国政府の判断に委ねることとし、今回の改革案には関連する条項を盛り込まないことで合意。欧州議会もこの方向で基本合意していたが、本会議が開かれた5月初めの時点でフランスではいわゆる「三振法」の成立が確実視されていたことから、これを阻止するため、裁判所の許可がなければネット接続を遮断してはならないとする条項を付け加えた経緯がある。

(EUobserver, June 12, 2009 他)

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