EU加盟国と欧州議会がネット遮断めぐる新条項で合意、通信規制改革法案が来年初めに成立へ

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EU加盟国と欧州議会がネット遮断めぐる新条項で合意、通信規制改革法案が来年初めに成立へ

 欧州議会とEU加盟国は11月4日に調停委員会を開いて通信規制改革法案について協議し、違法ダウンロード対策として規制当局がインターネット接続を切断するなどの措置を講じる際の要件を定めた追加条項を法案に盛り込むことで合意した。11月末までに欧州議会本会議とEU閣僚理事会で修正法案について採決を行い、来年初めの発効を目指す。

 欧州委員会が2007年に打ち出した通信規制改革法案は、域内の多くの国で依然として旧国営通信会社などが市場を支配している現状を改善して公正な競争を促進すると同時に、利用者により多くの権利と選択肢を与えることを目指している。具体的には各国の通信当局を統括する「欧州通信監督機関(BEREC)」の創設、ユーザーが1営業日以内に事業者を自由に変更できる仕組みの確立、不正アクセスなどセキュリティ上の問題によって個人データが流出した可能性がある場合の報告義務化などが法案に盛り込まれている。

 欧州議会と加盟国は今年4月に法案の内容でいったん合意したが、インターネットをめぐる利用者の権利に関連して、フランスで違法ダウンロードの常習者に対して3回目の違反でネット接続を切断することを柱とする、いわゆる「スリーストライク法」の成立が確実になったことを背景に(修正法案が10月に成立)、欧州議会は5月、当局の権限でネット接続を切断する場合は事前に裁判所の許可を要するとの条項を付け加えた修正案を可決した。これに対し、加盟国はネット上の海賊行為に対する取り締まりを強化すべきだとの立場から、6月の通信相理事会で修正案を否決。法案に盛り込まれた他の項目はすべて承認されながら、改革案は宙に浮いた状態が続いていた。

 今回新たに付け加えられた「インターネット上の自由に関する条項」は、当局が電気通信ネットワークを介して提供されるサービスへのアクセスや利用を制限する場合、いかなる措置も「欧州人権条約やEU法が保障する基本的人権と自由」を尊重したものでなければならないと明記。加盟国は「推定無罪の原則やプライバシー保護の原則に則り」、本人への事実確認や裁判所の判断など「事前の公正かつ公平な手続き」を経なければ、ユーザーの権利を制限する措置を講じることはできない旨を規定している。

 欧州委のレディング委員(情報社会・メディア担当)は声明で「インターネット利用に関する新たな条項はEU市民にとって大きな勝利だ」と強調。適正な事前の手続きや時宜を得た裁判所での審理が保証されない限り、違法ダウンロード対策としてインターネットへのアクセスを遮断することはできないと説明した。

 欧州議会と加盟国の承認を得て法案が成立した場合、加盟国は施行から18カ月以内に国内法を整備することが義務付けられる。また、域内の通信市場における規制・監督制度の一本化に向け、来春にもBERECが創設される見通しだ。

(European Parliament Press Release, November 5, 2009 他)

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