英諮問委が知財法改正の最終報告書、「デジタル著作権取引所」創設など10項目の提言

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英諮問委が知財法改正の最終報告書、「デジタル著作権取引所」創設など10項目の提言

 英政府の委託で知的財産権法の見直しを進めていたカーディフ大学のイアン・ハーグリーブス教授を中心とする諮問委員会は18日、「知的財産と成長戦略の見直し」と題した最終報告書(Hargreaves Report)をまとめた。諮問委は「時代遅れ」の知財関連法が「英国の技術革新と経済成長を妨げている」と結論づけ、デジタル著作権取引所(Digital Copyright Exchange)の創設などを柱とする10項目の施策を提言している。

 ハーグリーブス教授は130ページに及ぶ報告書の冒頭、「創作者の権利保護を通じたイノベーションに対する経済的インセンティブの確立を目指した300年以上も前の法律が、現在は技術革新と経済成長の妨げになっているという話は本当だろうか。端的に言えば、答えはイエスだ」と明言。とりわけ権利者の保護に過度な比重が置かれた著作権法による規制を緩和し、デジタル時代に適応したルールを整備する必要があると指摘している。報告書は10項目の施策をすべて実行した場合、79億ポンド(約1兆465億円)の経済効果が得られると試算している。

 諮問委はまず、デジタルコンテンツ産業の促進策として、2012年末までに著作権者が共通システムに基づいて著作物の利用を許諾できるオンライン取引制度の導入を提言している。報告書はデジタル著作権取引所を通じて手続きやコスト面でライセンスの取得が容易になり、合法的なデジタルコンテンツの流通が促されると指摘。「英国を世界で最もコンテンツビジネスに適した市場の1つに育成することができる」と強調している。

 報告書はこのほか
◇著作権者が不明なため許諾が得られない「孤児作品」の利用を可能にするための法律の整備
◇ダウンロードした楽曲をMP3プレイヤーに保存するといった「フォーマット移転」を禁止するルールなど、「時代遅れ」になった法律の廃止
◇パロディー作品に対する規制の緩和
----などを勧告している。

 一方、焦点の1つだったフェアユース規定の導入に関しては、「欧州では法律上、実現が難しいとの結論に達した」と説明。米国式のアプローチに否定的な見解を表明している。

 ハント文化・メディア・スポーツ相は報告書を受け、「著作物を合法的に利用して新たなビジネスモデルを試したいと考えている人々が、容易に許諾を得られる仕組みを整えるべきだ、という点が提言の本質だと理解している」とコメント。
報告書の内容を吟味して、夏をめどに政府としての見解をまとめる方針を示した。

(Financial Times, May 18, 2011 他)

(庵研究員著)

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