デジタル音楽配信の英スポッティファイが米国進出、無料サービスの制限で大手レコード会社に「譲歩」

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デジタル音楽配信の英スポッティファイが米国進出、無料サービスの制限で大手レコード会社に「譲歩」

 デジタル音楽サービスの英スポッティファイ(Spotify)は14日、同日から米国でサービスを開始すると発表した。2008年にスウェーデンで誕生したスポッティファイは欧州7カ国で定額制の音楽ストリーミングサービスを展開しており、米国が8番目の市場となる。同社は09年にも最大のデジタル音楽市場である米国に参入するとみられていたが、著作権侵害を警戒する大手レコード会社との交渉が難航して計画が遅れていた。

 スポッティファイの登録ユーザーは現在およそ1,000万人。このうち約840万人は広告付きの無料サービスを利用しており、広告が付かない有料サービスの利用者は160万人ほど。ユーザーは1,500万曲を超えるライブラリから好きな楽曲を選んでストリーミング再生できるほか、プレイリストを作成してFacebookやTwitterなどで友人と共有することもできる。

 同社は今年5月に無料サービスの利用条件を変更し、1カ月の再生時間を最大10時間に制限するとともに、1曲あたりの再生回数を5回までとする新たな制約を設けた。当然ながらこれはユーザーの強い反発を招いたが、市場関係者の間では米国進出を踏まえた措置だったとの指摘がある。違法ダウンロードに神経を尖らせる大手レコード会社は、たとえ広告付きの合法サービスであっても無料で楽曲を提供するスポッティファイのビジネスモデルに批判的。このため、無料サービスに対する新たな制限は大手4社(ユニバーサル、ソニー、EMI、ワーナーミュージック)との交渉をまとめるための「譲歩」だったいう分析だ。
 発表によると、米国でのサービスプランは無料の「Spotify Free」、月額4.99ドルの「Spotify Unlimited」、月額9.99ドルの「Spotify Premium」の3種類。広告付きのフリープランは招待制となる。アンリミテッドは広告なしですべての機能にアクセスすることができ、再生時間や回数の制限もない。さらにプレミアムはパソコンに加え、スマートフォンなどのモバイル端末によるサービス利用が可能だ。

 国際レコード産業連盟(IFPI)によると、欧州のデジタル音楽市場でスポッティファイは米アップルの「iTunes」に次いで2位につけている(売上高ベース)。ただ、米国では先行するパンドラやラプソディーなどがすでに強固な基盤を築いているほか、アマゾンとアップルがクラウドベースの音楽配信サービスに着手。間もなくグーグルも同分野に進出するとみられている。

(The Guardian, July 14, 2011 他)

(庵研究員著)

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