第3国向けのインド製後発医薬品、経由地での対応めぐりEUが譲歩

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第3国向けのインド製後発医薬品、経由地での対応めぐりEUが譲歩

 インドから南米やアフリカ諸国などに輸出される後発医薬品を経由地のEU加盟国が特許権侵害の疑いで押収した対応をめぐり、インドとブラジルがEUを世界貿易機関(WTO)に提訴している問題で、インド商務省は7月28日、EUとの間で暫定和解に達したことを明らかにした。EU側は域内を経由して第3国に輸出されるインド製の後発医薬品について、当該医薬品が実際にはEU市場向けの密輸品であることが「強く疑われる」場合を除き、押収などの措置を取らないことに合意した。欧州委員会は現在、インド製医薬品の取り扱いに関するルールの策定を進めており、インド側は法案の内容を見極めたうえでWTOへの提訴取り下げの検討に入るものとみられる。

 後発医薬品をめぐっては、途上国が自由な流通を求める一方、欧米の大手製薬会社は新興国の後発薬メーカーが実際には特許期間の残っている医薬品を製造しているケースがあると主張し、EUや米国などに対策を強化するよう圧力を強めている。EU内ではオランダ税関が2008年12月、インドからブラジルに輸出されるはずだった血圧降下剤の後発薬を押収したのをはじめ、ドイツやフランスでもエイズ治療薬や認知症治療薬などインド製の後発医薬薬が相次いで押収された。
自国で製造された後発医薬品が経由地でくり返し差し止められる事態に対し、インド政府はEU諸国の対応が合法的な後発医薬品の流通を妨げ、途上国の患者から安価な医薬品を入手する手段を奪っていると批判。昨年5月にオランダとEUをWTOに提訴した。

 インド商務省によると、EU域内を通過するインド製の後発医薬品は、特許権の効力が及ばない第3国への輸出品に見せかけてEU市場に密輸された疑いが極めて強い場合を除き、経由国の税関によって流通が阻害されることはなくなる。
EUとの交渉を担当する同省高官は「EUとの間で暫定和解に合意した。今後は最終的な和解に向けてEU側の対応を待つことになる」と発言。欧州委が策定を進めている法案の内容によっては再び対立姿勢をとる考えを示し、EU側を牽制している。

(Intellectual Property Watch, July 30, 2011 他)

(庵研究員著)

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