中国で録音者の保護期間が3カ月に?著作権法改正案めぐり音楽業界が猛反発

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中国で録音者の保護期間が3カ月に?著作権法改正案めぐり音楽業界が猛反発

 中国国家版権局が3月末に公表した著作権法の改正案をめぐり、音楽業界が反発を強めている。「発売から3カ月が経過した録音物は、著作権者の許諾を得ずに使用できる」との規定が盛り込まれているためで、特にレコード製作者の権利が大幅に制限されるとの懸念が広がっている。

 中国の著作権法は1990年に制定されたもので、抜本的な改正は今回が初めて。
世界貿易機関(WTO)への加盟や急速な経済成長を背景に、米国などが中国政府に対し、国際ルールに基づく著作権制度の整備を強く求めていた。

 国家版権局が公式サイトで公開している88条から成る改正法案で、音楽業界が最も問題視しているのは第46条の「発売から3カ月が経過した録音物は、第48条が定める条件に基づき、著作権者の許諾を得ずに他者が当該作品を利用して録音物を制作することができる」との規定。第48条は録音物を無許可で使用するための条件として、著作権管理団体または国務院著作権行政管理部局に申請し、当局が定める著作権使用料を管理団体に支払うことを義務づけている。

 第46条の規定は、予め当局に申請すれば、リリースから3カ月しか経っていない楽曲を他のアーティストが自由にカバーしたり、インターネット経由で楽曲を販売することなどが可能で、後から著作権侵害で罰金を科されることもない、と解釈することができる。ただし、実演権などが絡んでくるため、同一の音源で新たにCDなどを制作することはできないと考えられる。さらに現行法(第39条)には「著作権者が使用許諾を拒否した場合、第3者が当該作品を使用することはできない」との規定が盛り込まれているが、改正法案ではこうした著作権者の「拒否権」が削除されている。このため、レコード製作者はリリースから3カ月後にはすべての独占的権利を失うことになり、ビジネスに深刻な影響が及ぶのは確実だ。

 欧米では多くの国で著作権保護期間が著作者の死後70年となっているのに対し、中国では死後50年に設定されている。ただ、実際には音楽や映像の著作権はほとんど保護されていないのが実情で、海賊版ソフトや違法ダウンロードが横行している。

 大手音楽レーベル北京太合麦田(Taihe Rye Music)の最高経営責任者(CEO)で著名プロデューサーのZhan Hua氏は、新ルールが導入された場合、レコード会社はCDの制作やプロモーションなどに投じた巨額の資金が回収される前にすべての権利を失うことになると指摘。「誰かが作品をリリースするのを待つ方が得策ということになり、音楽産業は間違いなく停滞する」と警告している。

 一方、国家版権局のYan Xiaohong氏はロイター通信の取材に対し、「現行制度では著作権は事実上、まったく保護されていない。3カ月でも大幅な権利強化だ」と発言。改正法案は著作権者の権利保護と同時にコンテンツ産業の育成にも目を向けており、バランスのとれた内容だと強調している。

 国家版権局は4月30日まで改正案に対する意見募集を行っており、各方面から寄せられる意見を集約して年末までに国務院に法案を提出する方針を示している。

(Reuters, April 17, 2012 他)

(庵研究員著)

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