英国経済に対する文化・芸術の貢献度、0.1%の公的支出でGDPの0.4%を創出=芸術評議会の委託調査

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英国経済に対する文化・芸術の貢献度、0.1%の公的支出でGDPの0.4%を創出=芸術評議会の委託調査

 イングランド芸術評議会(ACE)はこのほど、文化・芸術分野の活動および資産が英国経済にもたらす価値について分析した調査リポートを公表した。「英国経済に対する文化・芸術の貢献」と題する同リポートは、ACEの委託で民間調査機関の経済ビジネスリサーチセンター(CEBR)がまとめた。これによると、文化・芸術分野への公的支出は全体の0.1%にとどまるのに対し、同分野は国内総生産(GDP)の0.4%に相当する利益を生んでおり、特に英国を訪れる観光客が博物館、美術館、観劇、コンサートなどの文化施設や芸術産業に投じる金額は年間8億5,600万ポンド(約1,312億円)に上ることが分かった。

 英政府は欧州債務危機を受けて緊縮策を進めており、6月末にはオズボーン財務相が2015−16年予算の歳出見直し策をまとめることになっている。すでに司法省やエネルギー・気候変動省など7省が最大10%の支出削減に合意しており、芸術関連団体などの間では文化予算の大幅な削減を懸念する声が高まっている。
ミラー文化・メディア・スポーツ相は先に「文化・芸術の経済効果を数値化し、英国経済にもたらす価値を明確に示す必要がある」と発言しており、ACEはこうした現状を踏まえて昨年11月にCEBRに調査を依頼していた。

 リポートによると、文化・芸術関連産業は2011年に約124億ポンドの収益を生み、制作費などのコストを差し引いた粗付加価値(GVA)は59億ポンドに上った。また、英国における就労人口の0.45%に相当する11万人が文化・芸術関連の仕事に就いており、周辺分野も含めると26万300人が従事していることになる。リポートはさらに、芸術や文化に触れることで批判的思考、独創的な問題解決法、コミュニケーション能力などを養い、効果的な自己表現法を身につけることができると指摘。こうした能力が生産性の向上に大きく寄与すると分析している。

 一方、リポートは文化・芸術分野への投資について、民間企業は興行面でリスクを伴うプロジェクトに対して投資を渋る傾向にあるため、実験的な創造活動を奨励するには公的支援が欠かせないと指摘。しかし、実際には緊縮財政で文化・芸術分野への補助金が削減される一方、消費者サイドでも失業や賃金低下などを背景に2011年以降は同分野への支出が減少傾向をたどっており、文化・芸術産業は二重の打撃を受けていると警告している。

 ACEのデイビー議長は「文化資産が多くの観光客を英国に引きつける極めて重要な要素になっていることや、文化施設や芸術活動が地域経済を活性化させる原動力になっていることなどは以前から認識されていたが、これらの事実が具体的な数字の形で示されたことに満足している。厳しい経済状況が続くなか、文化・芸術分野への投資がもたらすあらゆるメリットを詳細に分析し、貴重な資産を最大限に活用する方法を探る必要がある」と指摘している。

(The Guardian, May 7, 2013)

(庵研究員著)

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