地上波テレビ再送信めぐる著作権侵害訴訟、NFLとMLBが最高裁に「Aereo阻止」の意見書
海外ニュース
地上波テレビ再送信サービスのAereoに対する著作権侵害訴訟に関連して、米プロフットボールリーグ(NFL)と米大リーグ機構(MLB)は18日、Aereoのサービスは著作権侵害にあたるとするテレビネットワーク側の主張を支持する意見書を連邦最高裁判所に提出したことを明らかにした。Aereoをめぐっては、一審に続いて控訴審でもテレビネットワーク側による業務差止めの仮処分申請が却下されており、これを受けてAereoは段階的にサービスエリアを拡大している。しかし、広告・メディア市場で強い影響力を持つメジャースポーツの競技団体が「Aereo阻止」を鮮明に打ち出したことで、今後の審理や世論に影響が及ぶ可能性もある。
AereoはFoxで最高経営責任者(CEO)を務めたバリー・ディラー氏が経営するベンチャーキャピタルなどから資金提供を受け、昨年3月にニューヨークでサービスを開始。現在はボストン、アトランタ、ソルトレークシティ、マイアミ、シカゴ、ヒューストン、ダラス、デトロイトを加えた計9都市にエリアを拡大している。同社のサービスは加入者ごとにコインサイズの超小型アンテナを用意し、個々のアンテナがユーザーのリクエストに合わせてABC, CBS, NBC,FOX,PBSなど約30チャンネルの番組を受信。これをユーザーのパソコン、スマートフォン、タブレット端末などウェブ対応のデバイスにストリーミング配信
する仕組みで、録画も可能。料金は最大20時間分のオンラインストレージ付きで月額8ドルとなっている。
ケーブルテレビや衛星放送などの多チャンネル事業者はテレビネットワークとライセンス契約を結び、高額な再送信料を払って地上波テレビ番組を再送信しているのに対し、Aereoは対価を払わず無許可で番組を配信している。このためABCをはじめとするテレビネットワークは本格運用を前に、Aereoを著作権侵害でニューヨーク州の裁判所に提訴した。しかし、昨年7月の一審判決に続き、第2巡回区控訴裁判所は今年4月、Aereoのストリーミングサービスは加入者のリクエストに合わせて個々のアンテナが地上波の番組を受信し、それをブロードバンドでストリーミング送信するもので、公衆への番組再送信にはあたらないとするAereo側の主張を認め、同社に対する業務差止めの仮処分申請を却下。10月にはマサチューセッツ州でも同様の裁定が下されている。
テレビネットワーク側は連邦最高裁で争う方針だが、最高裁は2009年、米ケーブル大手ケーブルビジョンが2006年に開始した「ネットワークDVR」と呼ばれるリモートストレージ型DVRサービスを合法と認定した経緯がある。リモートストレージDVRシステムはユーザーが録画予約したテレビ番組を個人の録画機ではなく、事業者側の中央サーバに蓄積し、各世帯のセットトップボックス(STB)を使って番組を再生する仕組みで、Aereoとの類似性が指摘されている。今回、NFLとMLBはこうした情勢を踏まえ、法廷助言者(Amicus curiae)と呼ばれる利害関係者の立場で最高裁に意見書を提出した。
両団体はAereoの主張を支持した控訴審の裁定について、「テレビ番組の再送信にかかる権利処理の枠組みを不安定にする」と批判。商業目的にもかかわらずテレビネットワークに対価を支払わず、無許可で番組を配信するAereoのスタイルを認めれば、類似したサービスを提供する事業者が次々と現れ、「テレビ業界のビジネスモデルが崩壊する」と警告している。
両団体はさらに、NFLやMLBを含むコンテンツオーナーは、ケーブルテレビや衛星放送事業者がテレビネットワークに支払う「番組再送信料の一部を間接的に受け取っている」と説明。「Aereoのようなサービスが成立するのであれば、地上波テレビは著作物を伝達する媒体としての魅力を失う。結果的に、著作物の所有者はテレビネットワークへのコンテンツ提供を停止し、Aereoのようなサービスが番組を横取りできない、有料のケーブルネットワーク経由の送信に転換せざるを得なくなるだろう」と強調している。
(Mediapost Publications, 2013/11/18 他)
(庵研究員著)
AereoはFoxで最高経営責任者(CEO)を務めたバリー・ディラー氏が経営するベンチャーキャピタルなどから資金提供を受け、昨年3月にニューヨークでサービスを開始。現在はボストン、アトランタ、ソルトレークシティ、マイアミ、シカゴ、ヒューストン、ダラス、デトロイトを加えた計9都市にエリアを拡大している。同社のサービスは加入者ごとにコインサイズの超小型アンテナを用意し、個々のアンテナがユーザーのリクエストに合わせてABC, CBS, NBC,FOX,PBSなど約30チャンネルの番組を受信。これをユーザーのパソコン、スマートフォン、タブレット端末などウェブ対応のデバイスにストリーミング配信
する仕組みで、録画も可能。料金は最大20時間分のオンラインストレージ付きで月額8ドルとなっている。
ケーブルテレビや衛星放送などの多チャンネル事業者はテレビネットワークとライセンス契約を結び、高額な再送信料を払って地上波テレビ番組を再送信しているのに対し、Aereoは対価を払わず無許可で番組を配信している。このためABCをはじめとするテレビネットワークは本格運用を前に、Aereoを著作権侵害でニューヨーク州の裁判所に提訴した。しかし、昨年7月の一審判決に続き、第2巡回区控訴裁判所は今年4月、Aereoのストリーミングサービスは加入者のリクエストに合わせて個々のアンテナが地上波の番組を受信し、それをブロードバンドでストリーミング送信するもので、公衆への番組再送信にはあたらないとするAereo側の主張を認め、同社に対する業務差止めの仮処分申請を却下。10月にはマサチューセッツ州でも同様の裁定が下されている。
テレビネットワーク側は連邦最高裁で争う方針だが、最高裁は2009年、米ケーブル大手ケーブルビジョンが2006年に開始した「ネットワークDVR」と呼ばれるリモートストレージ型DVRサービスを合法と認定した経緯がある。リモートストレージDVRシステムはユーザーが録画予約したテレビ番組を個人の録画機ではなく、事業者側の中央サーバに蓄積し、各世帯のセットトップボックス(STB)を使って番組を再生する仕組みで、Aereoとの類似性が指摘されている。今回、NFLとMLBはこうした情勢を踏まえ、法廷助言者(Amicus curiae)と呼ばれる利害関係者の立場で最高裁に意見書を提出した。
両団体はAereoの主張を支持した控訴審の裁定について、「テレビ番組の再送信にかかる権利処理の枠組みを不安定にする」と批判。商業目的にもかかわらずテレビネットワークに対価を支払わず、無許可で番組を配信するAereoのスタイルを認めれば、類似したサービスを提供する事業者が次々と現れ、「テレビ業界のビジネスモデルが崩壊する」と警告している。
両団体はさらに、NFLやMLBを含むコンテンツオーナーは、ケーブルテレビや衛星放送事業者がテレビネットワークに支払う「番組再送信料の一部を間接的に受け取っている」と説明。「Aereoのようなサービスが成立するのであれば、地上波テレビは著作物を伝達する媒体としての魅力を失う。結果的に、著作物の所有者はテレビネットワークへのコンテンツ提供を停止し、Aereoのようなサービスが番組を横取りできない、有料のケーブルネットワーク経由の送信に転換せざるを得なくなるだろう」と強調している。
(Mediapost Publications, 2013/11/18 他)
(庵研究員著)
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