オランダの私的録音録画補償金制度は「EU法違反」、司法裁が現行制度の見直しを勧告

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 EU司法裁判所は4月9日、オランダの私的録音録画補償金制度は複製権の例外と著作権保護技術との関係について規定したEU指令に違反するとの判断を示した。オランダの著作権法では個人が商業目的でなく、私的な使用を目的として著作物を複製する場合は著作権侵害とみなされないが、違法コピー対策として著作権者の権利保護を図るため、記録媒体の製造業者と輸入業者に保証金の支払いを義務づけている。司法裁は違法ソースからの私的使用目的のダウンロードを著作権侵害とみなさず、合法的ソースからのダウンロードと同等に扱って、一律に私的複製の補償金制度を適用している点を問題視し、オランダ政府に対して早急に現行制度を見直すよう求めている。

 オランダでは1991年に私的録音録画補償金制度が導入され、2001年のEU指令を受けて2004年に著作権法の改正が行われた。現在は権利者の利益を代表する私的複製協会(Stichting de Thuiskopie)と、記録媒体の製造メーカーで構成する「SONT」と呼ばれる組織が補償金の対象品目と補償金額を決定している。

 司法裁は判決で、オランダの現行システムは合法的ソースからの私的複製と違法ソースからの私的複製を区別せず、私的使用を目的とする違法コンテンツのダウンロードを容認することで、補償金制度の本来の目的や機能が損なわれていると指摘。著作物の違法な複製も実質的に補償の対象となっており、そのため消費者は不当なコスト負担を強いられているとして、オランダ政府に対し、合法的な私的複製のみに補償金制度が適用されるよう制度変更を急ぐよう求めている。

 オランダでは長年にわたり、私的録音録画補償金制度を維持する代わりに違法ソースからの私的使用目的のダウンロードを引き続き容認するか、それとも違法ソースからの私的使用目的のダウンロードを違法化する代わりに私的録音録画補償金制度を廃止するか、という二者択一の議論が続いていた。国民の間ではダウンロード違法化は自由な情報の流通やオープンなインターネットの理念に反し、表現の自由や知識の共有を阻害するといった意見や、違法ダウンロードを取り締まるための監視行為が利用者のプライバシー侵害につながるといった懸念が根強く、最終的に政府は昨年、違法ソースからの私的使用目的のダウンロード違法化を見送った経緯がある。

 司法裁の判決を受け、オランダ治安・司法省はEUルールに沿って現行制度の見直しを進める方針を表明している。

(Future of Copyright, April 9, 2014 他)

(庵研究員)

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